基礎講座5:界面活性剤の危険度の見分け方〜合成界面活性剤と石けんについて

前回、界面活性剤とは何か、そのしくみと化粧品の製造での必要性を説明しました。(参照:基礎講座4:界面活性剤とは

「界面活性剤と合成界面活性剤は違うもの?」

「“合成”とつくものがあるから、“天然”のものもある?」

このような質問を持たれた方がいるのではないでしょうか。

ここでは界面活性剤についてもう少し詳しく見ていきます。界面活性剤の種類と用途、危険な界面活性剤と安全な界面活性剤についてと危険度の判断基準、そして安全な界面活性剤の代表である石けんについてお話しします。

天然の界面活性剤と合成した界面活性剤

おさらいとなりますが、水と油を結びつけるはたらきをする成分のことを「界面活性剤」といいます。本来は、どんな名前がつこうが、どんな用途に使われようが、洗い流したり、なじませたりする力が強かろうが弱かろうが、水と油を結びつける作用をもつすべての成分のことを「界面活性剤」というのです。

界面活性剤は、その生成方法により2つの種類に分類して考えられます。1つは「天然の界面活性剤」で、サポニン(ヘチマなどに含まれる)やレシチン(大豆や卵黄に含まれる)といった自然界に存在し、自然に代謝されるもの。もう1つは「合成した界面活性剤」で、いくつかの成分を配合して人工的に作られたもの。

界面活性剤のいろんな顔

界面活性剤は、水と油を混ぜてつくる化粧品製造において、欠かせない成分です。その中には「石けん」のような界面活性作用が弱いものと、「洗剤」のように作用が強いもの、「合成界面活性剤」が使われています。少しデータが古くなりますが、2007年の調査で約8000以上の化粧品成分が登録されており、その中で「合成界面活性剤」に当たる成分は、全体の30〜40%を占め、化粧品成分の王様のような存在となっています。

クレンジング、化粧水、クリームなどの基礎化粧品をはじめ、ファンデーション、チーク、マスカラ、口紅、アイシャドー、シャンプー、リンス、染毛剤など、ありとあらゆる製品に配合されています。

界面活性剤には、目的と用途によって様々な作用による呼び名があり、目的に応じて、種類や濃度も変わります。

化粧品・ヘアケア製品における界面活性剤

名称主な用途と肌にもたらす現象配合製品
洗浄剤油と水を混ぜて汚れを落とす。
肌を守っているバリアが失われやすくなる。
クレンジング、洗顔フォーム、シャンプー、ボディシャンプー
浸透剤成分を浸透させるために肌の油分を流出させる。
皮脂膜を破壊し肌バリアをこわす。
美容液、化粧水、乳液、クリーム、育毛剤(発毛剤)、美白化粧品
保湿剤肌に水分を含ませる。一時的にしっとりしたかのように錯覚させる。化粧水、クリーム、乳液、美容液
帯電防止剤髪に長時間水分を含ませて静電気の発生を防ぐ。シャンプー、リンス、トリートメント
補助剤合成界面活性剤でなく、それ単独では水と油を混ぜるほどの力はない。しかし、洗浄剤や浸透剤、乳化剤といっしょにすると水と油を混ぜる作用を強化するもの。シャンプー、洗顔料、クリーム、美容液、洗濯用洗剤
柔軟剤髪や肌を柔軟にする。表面バリアをこわして皮膚の中に入れ、合成ポリマーなどでフタをしてやわらかくする。シャンプー、リンス、トリートメント、洗濯用洗剤
[1] p138-139

製品の成分表では、以下のように表示されることもあります。

〇〇〇〇(成分名) 洗浄剤
△△△△(成分名) 乳化剤
□□□□(成分名) 保湿剤

上記したこれら、洗浄、浸透、保湿、柔軟剤、などのほとんどは、天然の界面活性剤では達成できない作用力が要するため合成界面活性剤にあたります。合成界面活性剤は、さまざまな作用を持ち、製品における用途によって呼び名がコロコロ変わる、カメレオンみたいな成分。しかし肌への作用は全て同じです。肌の油分を分解します。

界面活性剤の危険度の見分け方

「天然と合成があるなら、合成よりも天然の界面活性剤のほうが安全なのでは」

という印象を持ってしまいがちですが、正しくは

「天然だから安全」とは限らない

のです。

界面活性剤の危険度についてお話しする前に、ここで質問です。

次のうち、肌に対して、どれが危険な界面活性剤で、どれが安全な界面活性剤かわかりますか?

  1. 合成界面活性剤
  2. 石油系界面活性剤
  3. アミノ酸系界面活性剤
  4. 植物系界面活性剤
  5. 弱酸性界面活性剤
  6. オーガニック系界面活性剤
  7. 自然界に存在する天然由来の界面活性剤


正解は

「これだけではわからない」

です。

肌に対する界面活性剤の危険度は、種類や濃度によって異なります

「合成界面活性剤だからダメ」「石油系だから危険」「植物系なら安心」「天然のものなら大丈夫」といった単純な線引きをすることは難しいのです。

界面活性剤が皮膚の上で使用されると、皮脂やメイクなどの油分と反応し、肌から油分を取り除いたり(洗浄)、これらの油分と混じり合う(乳化)、という効果をもたらします。これらの作用が肌に与える影響の観点から、界面活性剤の危険度は以下のように定義づけられます。

危険な界面活性剤

自然なものでも、合成のものでも、洗浄力や乳化力を保ったまま、皮膚に長く残って、皮脂を水に流失させ、皮脂や角質層のバリア機能を失わせるもの

安全な界面活性剤

自然なものでも、合成のものでも、皮膚のうえで洗浄力や乳化力が消えて、皮脂を水に流失させず、皮脂や角質層のバリア機能が保たれるもの


[1]出典『ウソをつく化粧品』p.135

界面活性剤の危険度の判断基準は、以下のように考えてください。

  1. 作用が強い(界面活性度の作用が強い)
  2. 濃度が濃い(大量に配合され、界面活性剤濃度が濃い)
  3. 配合の数が多い(複数種類の界面活性剤が配合されている)

合成か天然か、植物系か、オーガニック系かどうか、が問題ではないのです。界面活性力の強さ、濃さ、数が重要となります。

バリア機能をこわさない界面活性剤〜石けん

安全な界面活性剤の例として「石けん」があげられます。「石けん」は、天然油脂に水酸化ナトリウムなどを反応させて作るので、人工的に作られた界面活性剤です。製造方法から見れば「合成の界面活性剤」といえますが、当研究所では石けんは合成界面活性剤とは呼ばず、石けん以外の人工的に作られた作用が強力な界面活性剤のことを「合成界面活性剤」と呼んでいます。                                  

石けんを「合成界面活性剤」から除外する理由は、肌バリアを壊す力が弱いためです。石けんは弱アルカリ性で、洗顔や洗髪のあと肌の酸分によって中和され、洗浄力(界面活性力)を失い、無力化します。しかも肌に残った石けんカスは常在菌の餌となります。一方で石けん以外の人工的に作られた界面活性剤、いわゆる「合成界面活性剤」は無力化することがなく、肌で分解されずにその強力な洗浄力を維持します。そのため石けんは安全な界面活性剤として、ほかの合成界面活性剤とは区別して考えているのです。

(注意)ちなみに、ここでいう「石けん」とは、原材料表記欄に、「石けん素地」「純石けん分(脂肪酸ナトリウム)」「純石けん分(脂肪酸カリウム)」と書いてあるものに限ります。石けんはアルカリ性です。弱酸性・中性・アミノ酸系と書いてあるものは、合成界面活性剤で作られた「石けんもどき」で総称して「複合石けん」と表示される場合もあります。「石けん」ではありませんので知っておいてください。

ただし、いくら安全な界面活性剤だからといって、一度に何度も石けん洗顔したり、石けん洗顔でも痛みを感じるほど敏感になってしまっている肌への使用は逆効果につながります。「いいもの」でも正しい使い方を学んでおくことも大切です。

界面活性剤と肌トラブル

「合成界面活性剤」は、現在市販されている多くの化粧品に必要不可欠な成分でありながら、その強力さゆえに、肌のバリア機能をも破壊し、肌荒れや乾燥肌などの肌トラブルの原因となっています。

健康な肌、すなわち、バリア機能が正常に働く肌をつくり維持するためには、使用する化粧品にどのような成分がどれくらい使われているのかを把握することが大事になります。

合成界面活性剤成分は、種類や濃度によって違いはあるものの、バリア機能をこわしてしまうという強力な作用をもっているものが多いのが特徴です。残念ながら成分標示のみでの判断は難しいことが多い現状ですが、そのような成分が存在することと、それらが多くの化粧品製品に使用されていることだけでも知っておいてください。

参考文献
[1]書籍「ウソをつく化粧品」 東京美容科学研究所所長 小澤貴子著

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