基礎講座3:肌のバリア機能

前回の「肌のしくみ」の続きです。

お肌の表面は、『お肌細胞』が死んで固くなった皮(角質層)でできているというお話をしてきました。

ではなぜ、お肌の表面に硬い丈夫な皮をつくる必要があるのでしょうか。

ここでは肌の2つの目的と肌のバリア機能、美しい肌とバリア機能の関係についてお話しします。

肌の2つの目的:流失を防ぎ、侵入させない

1つは先に書いた体の中のものが流失しないようにすること。もう1つは、「外部からの物質の侵入を防ぐ」ことです。

私たちが生活している世界では、ウイルスや細菌に触れることも日常茶飯事です。また、場合によっては体内に摂取したら危険なフグ毒などを、手で触ってしまうこともあるかもしれません。

それでも、人間は手で触れただけでウイルスに感染することは多くありません。トリカブトやフグ毒なども、触るだけで死んでしまうことはありません。

私たちの皮膚は、体の中で『最大の第一免疫』と呼ばれています。

外界からの物質の侵入をブロックする、これが第一免疫の働きで、この働きのことを、『バリア機能』と呼んでいます。つまり、それだけ、お肌の表面の丈夫な硬い皮によって守られているということなのです。

もう少し、バリア機能について詳しく見ていきましょう。

バリア機能の要(かなめ)

外部からの物質とは、ウイルスや細菌、毒性物質など体に有害なものも含みますし、水や栄養素など体が必要とする物質まで、あらゆる物質が含まれます。(水や栄養素は、皮膚から吸収するものではなく、本来は口から摂るものです。健康な皮膚は栄養素を皮膚から吸収することができません。皮膚から水分や栄養分を吸収しない、この原理はとても大切です!)

①体の中のものが流失しないようにする
②外部からの物質の侵入を防ぐ

この2つを「表皮のバリア機能」、または「肌のバリア機能」といいます。

なかでも、「皮脂膜」と「角質層」がバリアの要(かなめ)になっています。

そして、角質層の中にある「セラミド」という成分もバリア機能に欠かせない成分です。

下にある皮膚のイラストをごらんください。「皮脂膜」と「角質層」がわたしたちのお肌の表面にあることが分かると思います。

この2つの層がバリア機能をもつ『バリア層』なのです。

(厳密にいえば、皮脂膜は表皮ではありませんが、角質層と一緒にバリア機能を担う仲間と思ってください)

3つのバリア

第一のバリア〜皮脂膜

ずっと『お肌細胞』ばかりに注目してきましたが、実はお肌の一番際表面を覆って体内を守っているのは『皮脂膜』という油でできた膜です。

皮脂膜は、皮脂腺から分泌される皮脂という油のコーティングなのですが、鼻の頭やおでこがテカテカして「あぶらっぽいなぁ」と感じることはよくあると思います。お風呂に入れないと身体がベトベトするな、と感じますよね。この油が皮脂です。表皮(角質層)の上に、皮脂がうすい膜となって、覆(おお)っているイメージです。

皮脂腺は手のひらと足の裏以外の全身に存在します。ですから、ほぼ全身に皮脂という油の膜ができているということになります。皮脂膜は、外界と接する肌の表面で肌を守る、最初のバリアです。そのため、皮脂膜のことを第一のバリア」ともいいます。

第二のバリア〜角質層

表皮の一番下の方に、「基底層」があります。ここにある基底細胞は、お肌の工場なので、毎日新しい『お肌細胞』を作ります。作られたお肌細胞は正確には「角化細胞」と言われますが、この「角化」というのは、細胞が時間の経過とともに細胞死するという意味です。

『お肌細胞』は徐々にお肌の表面、つまり私たちが毎日触れている表面側に移動していきます。そして、お肌の一番上の表面に出てくると、細胞はすっかり死んでいて硬い丈夫な皮になっています。この部分を『角質層』

角質層については、こちらもご参考にしてみてください(参照:肌のしくみ)。

角質層の厚みは体の場所によっても違いますが、だいたい0.02ミリくらい。食品用のラップを2枚重ねた程度のうすさです。このうすくて硬い丈夫な皮の角質層が「第二のバリア」となります。

第三のバリア〜角質細胞間脂質(セラミド)

角質層では、『お肌細胞』は死んでいます。

細胞は箱のようなものでできていて、箱の中に様々なアミノ酸(天然保湿因子:NMF)やセラミドなどが入っています。

細胞が死ぬというのは、この箱がつぶれるということです。

つまり、角層は『お肌細胞』がいくつも段ボール箱がたたまれて折り重なるように重なってできています。畳まれて折り重なった段ボール箱だと思うと、丈夫で硬い皮になることがイメージできると思います。

ところで、箱がつぶれたとき、箱の中に入っていたものはどうなるでしょうか?
細胞と細胞のあいだにある隙間(すきま)には、この「箱の中に入っていたもの」が埋め尽くします。

角質細胞をレンガの壁にたとえてみましょう。レンガを並べていくと、どんなきれいに並べても隙間ができてしまいます。だから、セメントなどでそのあいだを埋めていきますよね。細胞間にもセメントと同じ役割をしているものが存在します。これを「角質細胞間脂質」といいます。

角質細胞間脂質として有名なのがセラミドです。

セラミドは脂質(油)の層と水分子の層が何層にも重なっていてできています。

つまり、油のカーテンと水のカーテンが交互にある、油と水でできたラザニアのような形をしているのです。

油のカーテンは、水分子や水に溶けている成分(たとえばビタミンCとか美白成分など)の侵入を防ぎます。

水のカーテンは、さまざまな油の侵入を防ぐ構造になっています。

お互い反発して仲の悪いことを「水と油の関係」と言いますよね。水と油は混ざり合うのことのない、相容れない物質です。まさにこの原理が角質層の中でバリア機能として組み込まれているのです。

油の層は水をはじき、水の層は油をはじく。水分子も、水に溶けるものも、油や油に溶けるものも、みんなお肌の中に入らないようにしています。この角質細胞間脂質(セラミド)を「第三のバリア」とよんでいます。

「バリア機能」をもつ「バリア層」を覚えよう

いままでの話をまとめましょう。

肌は

  1. 体の中の水分や保湿成分を失うことを防ぐ
  2. 外から様々な成分が体内に入らないように防ぐ

2つの役割を持つので、お肌は『最大の第一免疫』と言われるということ。

そして、その第一免疫のことを『バリア機能』と呼ぶこと。

お肌のバリア機能は具体的には、

  • 皮脂という油でできた皮脂膜
  • 『お肌細胞』が死んで固まった丈夫で硬い皮である角質層
  • 角質層の角質細胞脂質(セラミド)がもつ水のカーテンと油のカーテン

という部分が担っていること。
つまり、皮脂膜と角質層は人にとって大切な『バリア層』であるということです。

「バリア機能」と「美しい肌」の密な関係

バリア層は厚い方がいい?

皮脂膜も角質細胞間脂質も油なので、とくに水分子とか、水に溶けている成分の侵入は、かなりしっかりと防ぎます。

たとえば、お風呂に入ったとき、お湯は体の中に入りませんよね。これはあたりまえのことですが、皮膚のバリア機能がきちんとはたらいている証拠なのです。

ここで、質問があります。よく聞かれることなのですが、

「バリア層って分厚ければ分厚いほどよいの?」

という質問です。

つまり、お風呂に入らないで、角質層をため込んだ方がよいのでは?という問いになります。

お気づきのとおり、バリア層の1つである角質層は、いわゆる「垢」となって、お風呂で剥がれ落とす部分です。

『お肌細胞』は基底層という工場で作られてから約2週間かけて角質層の一番上にたどり着き、そこで1、2週間バリア層として働くと、やがて垢(アカ)としてはがれ落ちます。1,2週間働いていると、皮としてすり減ってもきますし、もろくなります。

皮ベルトも、使い続けて古くなるとボロボロしてきて、切れやすくなります。お肌も同じように、できたての角質層は丈夫で硬く、引張強度もあるのですが、古くなると弱くなるので入れ替えが必要です。これが『新陳代謝』なのです。

表皮にはこのようなしくみがあって、常に新しいバリアを保っているのです。

表皮の奥には真皮(しんぴ)があります。真皮にはコラーゲン線維など、弾力のある線維状のタンパク質がクッションとなって皮膚のハリを保っています。

また、真皮には血管が通っています。食べ物から摂った栄養素は、血液によって全身の細胞へと運ばれます。真皮にある血管を通じて表皮細胞へ栄養供給がなされているのです。『お肌細胞』をつくっている基底層も、この血液を栄養源にしています。

美しいお肌を求めるなら、血液から美しく。

丈夫で健康な『お肌細胞』をつくるために、食事から血液を栄養豊富にすること

そして、血流アップによって『お肌細胞』の生産量をアップさせ、『新陳代謝』を促すこと

美容への近道として、ぜひ覚えてください。

お肌のハリとなる真皮を守っているのも、お肌細胞をつくる工場を守っているのも、すべてお肌のバリア層です。

ところが、世の中にはこのバリア機能をこわしてしまうものがたくさんあり、実は、化粧品もそのひとつ。よかれと思って続けているお手入れがバリア機能をこわしてしまっていることがあるのです。バリア機能がこわれてしまうと肌の老化の加速や、さまざまな肌トラブルの原因となりかねません。

シミやシワをとる製品などは、作用成分を浸透させるためにバリア層を壊す成分が含まれます。

「バリア層は壊れるけど、シミやシワを取れますよ」

そんな甘い誘いには、何かしらの代償があると考えてください。

急がば回れ。お肌の当たり前の原理を通り越して、一瞬で効く魔法は、シンデレラの魔法と同じように夜中の12時までしか効かない、一時的なまやかしのようなものです。

「バリア層は厚い方がいいの?」という先ほどの質問の答えは

大事なのはバリア層の厚さではなく、豊富な栄養摂取と新陳代謝の促進、そして肌に備わったバリア機能を守ってあげること、というわけです。

バリア機能をこわす化粧品やお手入れについては、回を改めてお話ししたいと思います。

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