基礎講座4:界面活性剤とは
一般的な化粧品の原料に一番使われているものは何か、ご存じですか?
例えば……
ラウリル硫酸ナトリウム、
ポリクオタニウム-10、
ステアリン酸グリセリル、
PEG-40水添ヒマシ油
具体名を挙げるとこんな感じです。これらはみんな同じ仲間になります。
正解は、「界面活性剤」です。
「合成界面活性剤」という言葉は、よく耳にされると思います。ここに名前を挙げたものは、合成界面活性剤といわれる成分ですが、合成界面活性剤は界面活性剤の一種です。少し古いデータになりますが、2007年の調査では、日本化粧品工業連合会に登録されている約8000強の化粧品成分のうち、全体の30~40%が合成界面活性剤でした。何年も前のデータですから、いまはさらに多くなっているかもしれませんね。
今回は「界面活性剤」についてお話ししたいと思います。
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界面活性剤の役割〜水と油を仲良しにする
界面活性剤の「界面」は、「2つの物質の境目」のことです。
たとえば、水と油を1つのコップに入れると2層に分離し、両者の間には線が入っているかのように見えます。
この水と油の接している面が「界面」です。
水と油はそのままだとけっして混ざりません。
試しに、水と油を入れたコップを用意して、分離した状態のものをぐるぐるとかき混ぜてみてください。
一時は混ざり合ったようになりますが、しばらくすると分離した状態に戻ります。
ドレッシングも同じです。水と油が分離していますから、振って油分と水分を混ぜてから使いますよね。
混ざり合うことのない水と油の「界面(境目)」にはたらきかけて、性質を変えるはたらきをするのが「界面活性剤」です。
仲が悪いはずの水と油は、界面活性剤によって手をつなぎ、混ざり合います。
化粧品において、さまざまな用途に、さまざまな種類の界面活性剤が使われています。でも、原理はみんな同じです。
「水と油を結びつける」
この性質をもつ成分が界面活性剤なのです。
界面活性剤のしくみ
界面活性剤は、1つの分子の中に、水になじみやすい部分(親水基)と油になじみやすい部分(親油基または疎水基)があり、マッチ棒のような面白い形をしています。
マッチ棒の先が親水基、棒の部分が親油基です。
界面活性剤の親水基部分が水とくっつき、親油基部分が油とくっつくことにより、水と油が結びついて界面(境目)がなくなった状態、つまり混ざり合うのです。
先ほどの水と油が分離したコップの中に、台所用洗剤を数滴垂らしてかき混ぜたらどうなると思いますか?
簡単ですので、実際に試してみてください。
今度は時間がたっても分離した状態には戻りません。
台所用洗剤の中に入っている界面活性剤が水と油を結びつけたからです。(台所用洗剤の主成分は合成界面活性剤です)
油汚れを落とすにも界面活性剤が活躍します。
たとえば、お皿にこびりついた油汚れは、水で流してもなかなか取れません。
ですが、界面活性剤を主成分とする洗剤をかけると、界面活性剤が油汚れと水道の水を結びつけて流してくれるので、油汚れが落ちるようになります。
衣類の皮脂汚れが洗濯洗剤で落ちるのもこの原理と同じです。(洗濯用洗剤の主成分も合成界面活性剤です)
化粧品と界面活性剤
肌を守る最前線バリアとしてがんばっている皮脂は、油と水からできています(油分だけではないのです)。
化粧品のクリームは、本来、この天然のクリームともいえる皮脂に似た成分で作られるべきものです。
皮脂と似た成分であれば、肌のバリア機能を強化してくれるからです。
ですから、市販のクリームは水と油できています。
ただし、単純に油分と水分を混ぜただけではすぐに分離してしまい、顔に塗ることはできません。
そこで、界面活性剤を使って、油分と水分が分離しないようになじませているのです。
界面活性剤は、クリーム、乳液、メイク落とし、ファンデーション、チーク、日焼け止め、口紅、マスカラ、アイシャドー、ムース、整髪剤など、ありとあらゆる化粧品に配合されています。
このトピックについてはこちらの記事でも紹介しています。合わせてお読みください → 皮膚美容科学セミナー参加体験レポート